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院長の部屋

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認知症について

認知症とは

脳卒中に次いで要介護となる病気に認知症があります。いわゆるもの物忘れからはじまり、これが、不安、抑うつ、焦燥につながり、時としてご家族、親しい間柄に不和を招き、さらに、今はいつ? 場所は? 年齢は? など失見当識を生じて日常生活が不自由になり、ご家族、そして、デイサービスなど社会的支援が必要になってきます。

この時、ご本人が実感する「忘れてしまった」「できなくなってしまった」という落胆した気持ちがやがて焦りにつながり、いつもそわそわ、あるいはイライラが募ってきます。この焦り、いらだちに共感することが診療、介護に大切なのです。

認知症の方の「こころ」の中は

もう少し、認知症の方の「こころ」の中を考えてみましょう。
置き忘れ、しまい忘れ、人の名前が出ないなど、繰り返し、忘れてしまっているのを一番実感しているのはご自身であります。ご本人は、いつもできていたことができない、と不安になり、時には、身近なご家族に怒ったりするようになります。しかし、その怒りは不安からくるものなのです。まずは、物忘れ→忘れたら困る→不安は連鎖しており、それに共感してあげることが大切です。

人間の近似記憶は海馬にあるとされます。海馬はタツノオトシゴのような形をしており、神経細胞で再生能力をもつことで知られています。新たな細胞で新たな情報をとらえるとでもいえるでしょうか。
しかし、認知症の方はこの海馬の神経が変性、脱落してしまいます。すなわち、短い時間の記憶をとどめておくことができなくなってしまうのです。

海馬の前の赤い部分をみてください。扁桃体という部分が存在します。これは、記憶を調節したり、恐怖を条件づける作用があります。要するに、恐怖体験、嫌なことの方が記憶に残るということは皆さんも経験されていると思います。生物界は弱肉強食でありますから、恐怖を感じたことを覚えていない、あるいは、恐怖を感じても逃げなければ進化の過程において強者の餌食になってしまったと思われます。恐怖感を感じ記憶をとどめておくのは大切なことです。
しかし、記憶をとどめておくことができなくなると、この恐怖感、不安感のみが残ることになります。したがい、自分の覚えてるところは安心しますが、異なった環境には適応できないのです。

「うちのおばあちゃんはデイサービスにいきたがらないんです」、「施設に入ったんですが家に帰りたい」といって困ってしまうなどの相談を受けます。すなわち、新しい環境の、ドア、ベットの位置、トイレの場所、食事の場所すべて初めてのことで覚えることができない、すなわち慣れないものには拒否がおきます。デイサービスでさえも、どんなものか想像できず、行きたくない、になってしまうのです。慣れない環境への不安、焦燥のみが残り、病院、施設で、点滴を抜いてしまう、じっとしてられない、家に帰るといってきかないなどです。ときにせん妄になり手が付けられなくなってしまいます。

その反面、訪問診療では、住み慣れた施設、在宅で環境が変わることなく治療できることがメリットです。もちろん重症の方は病院ですが、認知症の方は、とくに在宅で治療できれば、そちらがいいでしょう。

図1は、若いころアメリカのMDアンダーソンがんセンターで、海馬をストレス(この場合は放射線ですが)から守る薬剤の開発をしましたが、実際に薬までいきつくことはできませんでした。


図1

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